しころだちのお家リノベーション【岩出市】2022年
岩出市の大通りから少し中に入った、古いお家が立ち並ぶ中に、こちらのお家はあります。おじい様がお建てになった「しころだち」と呼ばれる四方に2重に屋根がのびる伝統的な立派な日本家屋。築年数は60年位でしょうか。その母屋に増築が繰り返され、北・東・南方向に、増築部が取り付いている間取りでありました。
初めてお家を拝見させていただいた際、その母屋部分(特にお座敷)の美しさと、建てられた大工さんの腕の良さ、そして何より、ずっと綺麗にこのお座敷を保っておられるお客様のこのお家への愛着の深さに感動を覚えました。
ただ、よくよく調査させていただきますと、普段お食事をしたり、くつろいだり、家事をしたり、お休みになったりするのは、全て増築部であって、母屋部分はお客様や仏事などに使われる際のみ。こんなに綺麗な母屋とそこから見える綺麗なお庭が、普段の暮らしの空間につながらないのは、あまりにももったいない。更には、今はお母様とお二人でお住まいですから、将来的に増築部の減築なども考えてとのご要望から、「母屋部を活かすこと、そしてそこにコンパクトにつながること」を大命題にして、家づくりは進みました。
大切に守ってきた母屋部の二間続きの和室はそのままに、母屋の他の部分と、増築部は床壁天井をめくり、構造を確認したうえで効果的な補強をし、複雑につながっていてあちらこちらの床の段差を整理して無くし、断熱を丁寧に施工していき、性能向上につとめています。
間取り的には、以前母屋の応接室と増築部のローカ、洗面、浴室、勝手口、納戸などであった部分の間仕切りを取り払いつなげ、リビングとダイニング、キッチンとしました。リビングでは天井を取り払った際に出てきた立派な丸太梁をお客様のご要望もあり、見せるようにして、天井を高くしています。さらに、今までは応接室に遮られダイニングに南の光が届きませんでしたので、ダイニングやリビングを移動し南面させることによって、明るい光を室内に導くことができました。
また、リビングはそのまま残した和室にもつながります。今までは、壁で遮られていましたが、構造を検討し一部壁を取り払うことができたため、和室にも視線がのび、とても広々となりました。さらに、初めから触れているように風情の素晴らしい和室とつながることによって、リビングの居心地もよりよくなり、「リビングからの眺めがとてもよくなった」と非常にお喜びいただいています。
キッチンはリビングの東側に。リノベーション前のお家でも明るい朝日が入るキッチンが気持ちよかったとのご要望で。ダイニングは一日で一番長い時間いる場所ということで、テレビの座る場所をしっかり確保し、天井高さも少し低く抑えて、落ち着いて座れることを重視しました。新しく足した梁もデザインのポイントになっています。
リビング・ダイニングの北側、以前キッチンとダイニングがあった場所には、ウォークインクローゼットと洗面家事室と浴室。そして玄関(勝手口)。帰ってきてからの、靴を脱ぐ、着替える、洗面で手や顔を洗う、そして服を片付ける、という動線が便利なようにまとめました。
まだまだご紹介したい所はたくさんありますが、ひとまずこの辺で(動画もご覧になってください)
大工さんが良い材料と良い仕事でお客様に応え、それをお客様も大切にしているM様のお家は、とても幸せなお家です。そしてそのお家のリノベーション工事を任せていただく事は大変光栄なことであるとともに、大きなプレッシャーのかかるお仕事でもありました。しかし、お客様には本当に良くしていただき、うちの若い大工さんも子どもの様に可愛がっていただき、とてもスムーズに進みました。そして良い仕事が出来たと思います。大工さんも私も古い良い仕事に触れることができ、大変勉強にもなり、本当にありがたいお仕事でありました。M様誠にありがとうございました。これからも何卒よろしくお願い申し上げます。