愛着あるおじい様のお家の建て替え　【和歌山市】2022年

JR和歌山駅も近い、街中の住宅街に建つ30代前半のご夫婦と小さなお子様2人の、約38坪のお家。おじい様がお建てになって、長くお住まいになった愛着あるお家の建て替えです。
初めは他社様とお話が進んでいたようですが、予算や設計の自由度のなさなどから、ご自分たちの求めているものが不可能だと感じ、弊社にご相談をいただきました。

街中の住宅街ですから、周囲のお家も隙間なく建っていますし、前面道路の問題もあるので、遠く外に良い眺めや開放感を得ることは難しいですが、敷地の中で光と風を感じ、落ち着いたここちよい暮らしを過ごせるように計画いたしました。そのため、南側に庭空間を確保し、そこに向かって開いています。

建て込んでいる住環境ですから、このお庭空間は、こちらのお家だけではなく、周囲のお家にとっても、光と風を届ける貴重な空間になって、お喜びいただけることと思います。そして、そのお庭にはデッキを。外の暮らしを楽しむことは一軒家の醍醐味ですし、室内と室外をつなげて広々と開放感を得られて気持ちよい。さらにこちらのお家のように一部大きくすれば、子どもさんの遊び場や、お茶をしたりなど、アウトドアリビングとしても活躍してくれます。

ダイニングの奥は子どもの勉強や、ちょっとした書き物ができるデスクコーナーです。そしてそのデスクコーナーはキッチンバックのカウンター収納とつながります。

キッチンとダイニングテーブルも一列に並んでいますから、キッチンを中心に子どもの勉強を見たり、食事をさせたりと、とても使いやすくまとまっています。

キッチンはI型のシステムキッチンと、背面に冷蔵庫とパントリー収納、家電と食器のカウンター収納が並びます。キッチンに立つとリビング全体を見渡せると共に、南側の庭にもデッキを通して視線が抜けて、とても「ここちよいキッチン」となりました。

このお家の大きな特徴として、以前建っていたお家の思い出があります。お客様のおじい様がお建てになって、ずっと暮らしてきたお家。その思い出を持っていくことが「大切なこと」でありました。

リビングと和室の境に設けたのが以前のお家にあった和室の欄間です。その下の障子も以前のお家の物。さらに、ホールの階段の上り口の壁にある障子は、以前の和室の床の間の書院障子。前のお家のものを使うのは、寸法も合わせなくていけませんし、また使えるように修理なども必要で手間も熟練の技術も必要ですが、それでもご家族の思いの詰まった大切なものを持っていくことには変えられませんし、新しいものにはない風情がありますし、ものを大切にするという観点からも、とても良いことだと思います。

ただ、古い物が新しいお家から浮いているようなイメージになるのは野暮ですから、違和感なく納まっていて、知らない方が見ても分からない位にまとめるように気をつけています。特にこの玄関ホールなどは、お客様がお好きな和風情の玄関として綺麗に納まったのではないかと思います。正面の階段上り口の書院障子再利用は、どこにつけるか？随分お客様と一緒に考えましたが、結果的に玄関入ってすぐ、人を迎えてくれる所に納まって、とても上手くいったと思います。

他にも、玄関靴箱の一枚板に代表されるように、銘木屋さんに見学に行って決めたお気に入りの一枚板が色々な造り付け家具のカウンターにふんだんに使われていたり、

玄関とつながるシューズクローゼットにも納戸にもなる部屋に現されるように、奥様こだわりの「使いやすく大容量の収納」にも力を入れて造りました。（2階の大きな納戸や各個室の収納など）

また、スイッチプレートや傘掛け、タオル掛けやトイレットペーパーホルダーなどの細部の物も、お客様からセンスの良い物をご提案いただき、私たちも勉強になりました。建築の申請に手こずり、工期も長くなってしまいご迷惑をおかけしましたが、寛大なお心でお家づくりを楽しんでいただき、誠にありがとうございました。

また、毎回の現場での打ち合わせも色々な面白いご提案に加え、大工職人さんたちへの優しいお心づかいも頂戴し、大変楽しく進めさせていただきました。重ねて御礼申し上げます。

穏やかで優しいお客様そのものの、落ち着いた上品なお家になったと思います。

F様、今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。