中庭に開くお家【堺市】2020年
堺市三国ヶ丘の閑静な住宅街に建つ40代ご夫妻とお子様2人の35坪のお住まいです。
静かで周辺には緑もあり都市部の落ち着いた恵まれた住環境ですが、周辺には3階建のお家や低層のマンションがすき間なく建つ、そんな都市部にありがちな条件にどう対処していくか?が大きなポイントでした。また、南側の間口も8m弱で南北に長い(元は月極駐車場)、いわゆる「うなぎの寝床」的な敷地。こういった場合、日本にはよい解決策があります。京町家に代表される「中庭」の手法です。
中庭には高い木塀を設けて、外部からの視線はカットしています。都市部で大きな開口部を設けると、外からの視線や歩行者・車が気になってしまい窓が開けられないことが多いのですが、中庭が外と内のワンクッションとなって、思い切って開くことができます。
街中の喧騒を感じさせず、ゆったりと落ち着いた暮らしを望むお客様のためにもこの中庭はぴったりです。小さなテントを張ったりバーベキューをしたり、時には外の暮らしを楽しみ、小さなテーブルをだしてお茶をしたり、昼寝をしたりと内の暮らしの延長として楽しんだり、外にも内にもなる中庭は大活躍です。
そしてその中庭には、木のデッキと少しの緑があることも、とても効果的です。デッキがあることにより、内と外が連続し、内部も広く感じることができますし、やはり緑が見えると暮らしに潤いが生まれて、忙しい毎日の中、ほっと心を癒やしてくれます。またこの中庭は和室にも玄関ホールにも面し、2階各部屋とも面し、まさしくお家の中心で、お家のあちこちに光と風と「ここちよさ」を導いています。
ダイニングのペンダントやトイレ手洗いの丸形ミラーなどにも見られるモダンなデザインもお好きな奥様のお好みにあうように、内部のデザインにはいつも以上に「上品さ」に気をつけました。自然素材を多用しながら「素朴さ」が勝ちすぎないように、大味にならないように細部のディティールに注意しました。
それは色々な所に見られますが、例えばキッチンの柱を丸く加工したり、栃一枚板テーブルの脚も黒い特注のアイアンにしたり、内部の建具にも格子を多用したりと。また、内部には、吉野杉、吉野桧に始まり、栗、栃、松、タモなど上質な無垢材を使っていますが、野暮ったくならないように、使いすぎと杢目、節には気をつけました。全体的にも膨張して間延びしないように、色や納まりなどでも「締まる」ということに気をつけました。
「スッキリとモダンなデザインでありながら安らぎを感じる空間」お客様のご要望にかなった空間になったのではないかと思います。お住まいいただいてから遊びによった際も、「ちょっと外に出るだけでも気分が変わるし、子どもたちと寝転んでみたらびっくりする位気持ちが良くて。中庭があって本当に良かったです」とご感想をいただいたり、「ハウスダストに敏感だったお子様も全く気にすることがない!」と、とても喜んでいただき、私たちも大変嬉しかったです。ちょうどステイホームと言われだした時期ともかぶり、中庭の魅力、木の家の魅力、ここちよい家の魅力、本来もつ力を改めて確認させていただきました。これからも末永いお付き合いをよろしくお願い申し上げます。