美しい邸宅【大阪府】2025年
大阪府のとある自然豊かな住宅街の一画、87坪の敷地に建つ50代ご夫婦(お子様は大学生で他府県へ進学)の45坪(車庫含む)のお住まいです。
高齢になっても快適な暮らしができることが初めの大きなご要望でありました。その点でも【性能】にもこだわりをもち、それがよいと有名な○○工務店や○○ハウスなどのメーカーさんを見て回っておったそうです。ただ、間取りの自由さや空間の仕上がりに納得がいかず、弊社のモデルハウスや完成見学会に足をお運びいただき「美しいお家」とお気に召していただくことができました。
ただ、弊社はあまり性能を謳ってはいませんから初めはご主人様も不安もお持ちだったと思いますが、色々なご提案もいただきながら設計は順調にすすんでいきました。(お引渡し時の測定で、外皮熱還流率UA値0.38、相当隙間面積C値0.4)

南隣地一杯にお家が建ったこと、そもそもの強いご要望として「周囲の視線を気にせずゆっくり過ごしたい!」があったことから、建物でお庭を囲む=コートハウス型のプランとし、そこを核にお家の空間は造られていきました。そのリビングの中心には幅6m×高さ2.4mの大きな木製サッシュがあって(いつも以上に大きいため動作性能と気密断熱性能から木製サッシュを採用)、全て開ききると中庭も室内と一体になり素晴らしい開放感が得られます。
また、その前には障子。障子を閉めた状態で真ん中だけあけられる(変則雪見障子)ようにもなっていて、植栽を絵の様に切り取って楽しむこともできます。

リビングの開口部の高さを2.4mにあげたこともあって、いつもよりもあげて天井高さは2.8mに。ゆったりとしたリビングダイニングの広さと天井高さが上手く合って、大味にならず、落ち着いた上質で美しいリビングダイニング空間が生まれました。また、お客様のこだわりでテレビを配置せず、漆喰壁にプロジェクターで投影するようにしたこともこの空間に非常にマッチしたと思います。


リビング北側には大きな飾り棚カウンター。その背面壁には存在感抜群の「土割れ壁」。左官職人の名人として世界的に有名な久住有生さんの仕事を参考にお客様と左官屋さんと一緒に考えました。
弊社の左官仕事を任せている原左官さんは久住さんと一緒に仕事をしていることもあり、実際久住さんに相談をし、たくさんのサンプルを造り文字通り精魂込めて塗り上げていただきました。塗ってからしばらくしてから割れてくる「土割れ壁」ですから、原さんの直観と経験に裏打ちされたセンス勝負です。想定通りに割れ仕上がった時の感動は忘れられない経験となりました。
もちろん、その壁の下地を拵え、その廻りのタモの化粧柱やカエデの木枠を仕上げた大工さん、ケヤキのカウンター家具をきっちりと造りこんでくれた造作家具屋さん、大工職人さん皆の確かな仕事と素晴らしい木があったからこそであって、ここにはこのお家のこだわりが凝縮されていると言えると思います。

また、先ほどもでた中庭です。手間をあまりかけたくないとの事で植栽は盆栽のような小さな植栽のみ。桜島溶岩の敷石と黒玉石でシンプルに仕上げ、鎖樋をアクセントとなるように配置しました。ヨガやお月見をしながらの晩酌、雨の日は鎖樋からの雨落ちを、四季の移ろいを愉しんでいただける、とても豊かな空間に仕上がったと思います。


各部屋のご紹介にうつります。
玄関ドアは断熱気密へのこだわりと多機能性も求め既製品のサッシュを選びましたが、横に木枠FIXをつなげ全体的にも無垢の木枠でカバーすることによってサッシュ感を減じるようにしました。天井のマホガニー、床のブラックチェリーに加え、式台やベンチ、上り框、手すりに使った様々な銘木(椿、キワダ、ウォールナットなど)が、まず出迎えてくれることによって、その後に続くこのお家の美しさ上質さへの導入となっています。多種多様な木が玄関という大きくない空間にあるわけで、普通考えるとお互いが喧嘩しそうにも思いますが、上質な天然木材どうしはお互いをより引き立ててくれます。これはシート貼りの人工物やペンキなどでは決してうまくいかず、不思議な物です。

玄関の横には、シューズクローゼット兼ストックルームがあり、そこからキッチンへと繋がっています。回遊性を確保するとともに、配線や設備関係の集中スイッチなどもまとまっており、帰ってきてからすぐの動線には非常に便利な仕掛けとなっています。

そのストックルームからつながるのがキッチンです。キッチンから全体を見渡したい事、毎日3色お家で食べられることから、玄関入ってすぐリビングからも続くキッチンとなりました。ただ、奥様はリビングに見えてしまうことによって収納が不足するのではないか?と不安を感じておられましたが、先ほどのストックルームをキッチン奥(玄関との間)に設ける事により解消いたしました。

キッチンはパナソニックのシステムキッチンに、GAGGENAU(ガゲナウ)の食洗機やアリアフィーナのレンジフードなど、お客様こだわりの設備を組み合わせ、キッチンバックはウォールナットの造り付け収納と、ケヤキの棚板で実用性を兼ね備えながらスッキリと納めました。また、お気に入りのキッチン用品を掛けられるように、寸法などをしっかりと確認した上で、マグネットを取り付けられる壁も設けました。


さて、先ほどとは逆に玄関をシューズクローゼットキッチン方向へ進まず、まっすぐ進むと、リビング導入部のホールに出ます。「洞窟のような空間も欲しい」とのご要望に基づき、天井を低く押さえ、壁天井とも同じ左官壁で塗りこみました。それが、奥につながる天井の高いリビングダイニングとメリハリが効き、よりリビング空間の広がりを生んだように思います。

そのホールをリビングへ進まず、左へ折れると、お仕事をお家でされるための書斎空間です。中庭に面し、外を感じながらも隣地や歩く方や車からの視線は感じず、気持ちよく安心して没頭いただける空間にいたしました。

その書斎空間から続くのが、寝室。朝日を感じて目を覚ましたいとのご要望から東側へ配置。道路に面しますので木格子を設けその前に落葉樹を。柔らかく視線をカットして光を取り込むようにしています。また、天井を勾配にし足元へ下げて落ち着いた寝室になるように考えています。

また、先ほどの書斎の奥へとつながるのが趣味の部屋。ご主人のプラモデルがずらっと並ぶ空間と、映画や音楽を楽しめる防音室。プロにご協力いただき本格的な防音室となりました。お家での暮らしを存分に楽しんでいただけるように。羨ましいお部屋ですね。


ホールから書斎を通じて、寝室・趣味の部屋。こちら側はかなりプライバシーの強い空間。初めのホールからリビング方向がお客様やお友達を通す空間。はっきりとゾーンで分けているのもこのお家の特徴です。
リビングの奥には和室。リビングの続きとして寝転がってリラックスもできるように、肩肘張らない和室です。フスマ紙や引手など細部もこちらのお家のリビング空間の雰囲気と自然とつながるように気を付けました。

その和室の奥が水回り空間と収納部屋。キッチンとは少し離れていますが、洗濯、物干し、片付けと一カ所にまとめられるように。既製品の洗面化粧台ですがミラーを造り付け収納に組み込んだりと、所々にお客様のこだわりが表れています。

このお家は設備にも大変こだわりました。弊社が良く採用するエアコン一台でお家全体を暖房する【パッシブ冷暖】の他、調光システム・一括消灯、セキュリティシステム、全館浄水、太陽光、換気設備など、お客様にもたくさん教えていただきながら、電気屋・水道屋さんたちと一緒に最新の設備機能を、お家の美しい空間を損なわないように必死に納まりを考えて、組み込んでまいりました。弊社も本当にたくさんのことを学ばさせてもらいました。

弊社の大工さんを初め多くの職人さん、設計の福井、本当に皆が良くしてもらいました。暑い日も寒い日を考えてのお客様の多大なるお気遣いにはこちらも恐縮するばかりでした。完成した後もお食事をいただいたり、本当に我が子のように可愛がっていただきました(お客様はまだまだそんなお年ではないのですが)
建築や芸術への深い造詣とセンス。高い教養とたくさんお勉強なされた建築知識をお持ちのお客様ご夫妻に一生懸命皆でついていったおかげで、このような美しいお家が建った。これが正直な感想です。
今後とも、末長く可愛がっていただけますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
(設計担当 福井 大工担当 山本・堺)