野上のブログ

オーソドックス?トラディショナル?

和歌山市東部のF様家。内部の大工工事も順調よく進み、今は上のような和室の仕事にも入っています。

一口に和室と言っても色々なやり方があるのだけど、今日注目してほしいのは天丁度背の高さ位に廻る横の木のこと。この木を「長押=なげし」と言います。ご自分のお家に伝統的な和室があった方やお祖父ちゃんのお家などを想像してもらうと、思い当たる方もいると思います。

分かります?襖の上にある木のことです。これがぐるっと和室を廻る(床の間のところはありません)がオーソドックスなやり方。

けど、実はこういう和室はお客様のご希望があったり伝統的な和が好きなお客様の場合を除き、弊社はあまりやっておりません。

お茶室などにも通ずる「すっきりとした粋な和」が好きですから、出来るだけ【線を消す】意味で長押はつけないことが多いのです。ただ、上の伝統的な和室を見てもお分かりのように、それにはそれの魅力がありますから、どっちが良い悪いではなくて、好みですね。

和室の仕事は手の切れるようなビシッとした仕事。やはり難易度もあがります。

けれど一つ注意しておかなければいけないのは、「くずす」のは、やはり「オーソドックス」が十分できてから。オーソドックスなトラディショナルな和室の理解が深い上で、線を消す、シンプルな粋な和というのができると思います。

そこが理解できていないと、薄っぺらい和風、もっと言えば安っぽくなるだけでありまして、分かって技を押さえるのと、ただ面倒くさいからシンプルにしたいというのでは雲泥の差になります。

更に、オーソドックスも形だけまねるのも問題です。ただ長押がついていれば伝統的な和室になるかと言えばそんな事はなく、床から長押までの高さ、天井高さ、長押の大きさなど、しっかりと意味が分かっていなければいけません。

その点、伝統的な和室は各所のバランスがよく考えら得ていて素晴らしく、それをそのままの寸法で真似ておけば全く問題なく上手く違和感なく豊かな空間に仕上がるから大したものです。

けれど、昔の高さなら頭をうつから(今は身長高くなったから)、長押の高さだけ上げて(2mとか)、けれど天井高さは「まあどこでも標準の2.4mでいいや」とか、適当にやると、非常にアンバランスな和室となってしまい、そこに居るのが非常に気持ち悪くなります(私は)

とは申しましても、「住まい手はわからないんじゃない」とか、「高さのご希望も聞いてオーソドックスな長押の希望もあるからそれでいいじゃない」、「お客様はそこまで求めていないのよ」と言われちゃうと、それもおっしゃる通りと言えばそうなんですがね。

ただ、やはりやらせてもらえるからには出来るだけ良いものを目指したいと思いますし、やっぱり分かってくださるお客様もいらっしゃいますから、頑張っていきます。

こちらも伝統的な和室には必須の杉の天井板。こうやって張っていくのね。と建築関係者は喜んでくださる写真ですね。

はい、ということで、こちらのお家の和室の完成もお楽しみにお待ちいただいて今週はおしまい。今日は無事K様家の棟上げも完了いたしました。それはまた次週ご紹介いたします。明日から夏季休暇の方も多いでしょうか?ゆっくりと良い休暇をお過ごしくださいね。


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