野上のブログ

構造材を探して~情報誌「つくり手」より~

さて、今日はこれから出張ということもありまして、ネタに困った際にお届けする皆様お待ちかね?の、弊社情報誌「つくり手」から。

2017年の第10号。コロナもなけりゃ、ウッドショックも物不足もなかったわけで、わずか5年で家づくり・物づくりの体制や状況もこの頃とは様変わりしている所もありますが、根幹は変わらないということで。


とある県の林業振興課の方からのおすすめもあり、○○材を柱や梁材に採用できないか検討するため、先月末にとある村の製材所・材木屋さんへ尾崎棟梁と設計の福井を連れてお邪魔してまいりました。(2017年です)「○○の木は良い!」と祖父や尾崎棟梁も前々から述べていましたので機会があればと思っておりましたし、お客様に補助金もいただきやすいことから、非常にワクワクとし、ほぼ発注するつもりで、必要な木の寸法まで用意して現地へと向かいました。

結論から申しますと、丁寧にご案内いただいた〇〇村の方には申し訳なく、大変残念ではありますが、採用には至りませんでした。弊社は柱や土台は「吉野桧」と「米ヒバ」を採用しますので、梁・桁など水平材にいつも使う吉野杉との比較となります。

〇〇産の梁の木。十分問題ない材料なのですが
いつも使う吉野材の梁。全体的に赤い部分が大きい

上が〇〇の杉。下が弊社倉庫に今ある吉野杉の梁材です。もちろんある程度のバラツキはありますが、全体的に見て〇〇杉の方が白い部分が多い(白太が多い)事がわかります。写真で見るとそれほどでもありませんが、実際見ている感覚で言うと、かなりの差がありました。

それは吉野材と〇〇材の特性の違いに加えて、どの位の大きさ(つまり樹齢)の木を使っているかによるのです。

もの凄く簡単に言ってますが、分かりやすい例えとして

上の図面のように、同じ角材をとるのにも、大きな丸太から取る場合とギリギリの丸太から取るかによって、赤身の入り具合は変わってきます。これはその山や製材所の体制や考え方による所が大きいのだと思います。

ちなみに今回の○○村では樹齢50年弱の丸太だとおっしゃっていました。弊社がいつも使う吉野材は大体70〜100年ものです。(梁材。特殊な大きいものは何百年物になります)

また、先ほどの写真では分かり難いですが「年輪の細かさ」にもついても吉野材の方が断然優れていました。 一通り見学した後、尾崎棟梁が私に「こんな木を使って大彦の家とは言えやんで」とシンプルに言ってダメ押しでした。

もちろん今回の木も悪くないのです。ただ弊社の考える「より良い」というレベルにはなかっただけです。それにしても、今回の見学で、植林から始まり色々な体制まで含めての吉野材の奥深さを改めて思い知りました。

ただ、今回はお目にかかれませんでしたが、素晴らしいと噂される〇〇村の良材を探して、機会をつくってまた違う製材所を訪ねてみたいと思います。今回の吉野杉などは弊社作業場や現場でいつでもご覧になれます。ご興味のある方はお問合せなどより、お申し付けくださいませ。


はい。今や、良材にこだわるよりもとにかく材料の確保!が叫ばれる時代ですが、やっぱりこういう所は絶対に忘れてはいけないわけで、自分たちへの注意も含めて、今回あらためて。

ただ、全て以前と全く変わらないってのも無理なわけで、色んな分野で良材の確保というものも難しくなってくるのだろうなと思います。それは日本全体の国力の問題もあるわけで、とてもそういう事になりますとお手上げとなりますが、それでも日本で家づくり・物づくりできるのは大変恵まれておりますから、今まで以上に敏感にアンテナを張って、よりよい材料を探してまいりたいと思います。

こう書くと、今仕入れている構造材が品質が落ちてきているように誤解を招くかもしれませんが、今使っている木などは、以前と全く同じものですので、十分安心しております。今後のことを考えて。ということであります。

では、また来週。よろしくお願いいたします。


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