野上のブログ

「ぐんま」で「手刻み」(手刻み、墨付け手刻み、大工の手づくり、手刻み同好会)

いつも、こういうのは弊社情報誌「つくり手」の貴重なネタですので、そちらの投稿に使って、Blogにはあまり書いていないのですが(もしくは随分時間が経ってからアップ)、今回は出来立てほやほやでアップ。

なんてったって、一昨日と昨日のお話ですからね。(今日は長くなりそうですよ。。)


さて、まずは「手刻み」から少し。(もう何度もご覧いただいた方はスルーしてくださいね)

木の家の「柱」や「梁」。木の角材(丸太の場合もあり)をただ立てるだけではお家の骨格にはなりませんよね。柱と梁、梁と梁、を接合せねばなりません。その接合部に複雑な加工をして、がっちりと組まねばなりません。

(今まさに作業場で「梁」に加工されている木材)

その加工(穴を掘ったり、切ったり)方法の指示を直接、角材に書いていくことを「墨付け」と呼びます。

そして、その「墨付け」の指示通りに加工していくことを「刻み」とか「手刻み」と呼ぶわけです。

(刻まれた材料の一例。凸凹がしっかりと組み合わされそうでしょ)

この接合部の組み合わせが「仕口(しくち)」や「継手(つぎて)」と呼ばれておりまして、これは日本の千年を超える歴史の中で、大工さんたちが「強く長く持つ」ように考え、蓄積されてきたものです。

その仕口や継手を加工するのに、工場で機械でオートメーションで加工するのが「プレカット」。昔ながらに大工さんが手で加工するのが「手刻み」なんです。

ただ、今や圧倒的多いのはプレカット。手刻みはとても少なくなってきています。弊社は昔から全棟「手刻み」ですが、そういう工務店はかなり少なくなってきて、地域に何社かあるかないかという位になりました。

色々理由はあると思いますが、やはりプレカットは安価であること、生産性がよいこと、熟練大工を必要としないこと、手刻みをするための作業場や、良材をストックする倉庫が不要になることなど、が主な理由だと思います。(弊社はプレカットをやった事がないので、間違っていたらゴメンナサイ)

決して、プレカットの方が品質が良いから、性能が良いからという理由で、手刻みがなくなっていったわけではないと思います。

が、手刻みの良さというのはかなりあって、このまま無くなるのはダメだ!ってことで、日本建築界の著名な建築家や大学教授、建築の専門家の先生方と一緒に、大阪の羽根建築工房さんを筆頭に弊社も参画させてもらっている「手刻み同好会」が、数年前よりスタートしたわけです。

(手刻みの良さなどは、手刻み同好会のサイトをご覧ください→コチラ


はい。そしてその勉強会が一昨日・昨日と群馬県高崎市であったのです。

今回は、高崎市に残るアントニンレーモンド(軽井沢の一連の建物の設計や、前川國男先生、吉村順三先生など日本を代表する建築家を育てたことでも有名)の建築を見て勉強することと、

「軸組模型」を作って、木構造を考え「墨付け」の練習をしようということ。

(高知の「のりぞう工務店」さんがつくられた軸組模型。美しい。)

課題の図面を渡され、各社の大工さんが自分たちで構造を考え、軸組模型を作って集まりました。そして、手刻み同好会の顧問で、日本の木構造の権威でもあられる山辺先生が一つずつ講評してくれるという贅沢!(この世界の人間には垂涎の機会であります。皆うらやましがるでしょうねぇ。)

何度かご紹介しましたが、今回は、5年目25歳の戸高君と2年目24歳の木村君が挑戦。戸高君は何度か小さい建物(小屋など)の墨付けをしたうえで、先輩大工さんの指導の下、今年実際のお客様家の墨付けを経験しています。

ですが、木村君は全くの初めて。

「どこに柱を建てて、どのように梁を流して、組んでと」いう所から考えます。普段の家づくりでは、当然設計が構造設計もいたしますので、柱の位置や梁の組み方などは、大工さんだけで考えるのではなく、設計と大工さんが一緒に考えます。

《実は、今やこれも珍しいそうです。例え手刻みをできる工務店でも、設計事務所から図面を渡され、あくまでもそれ通りに加工するのが基本だからです。構造を考えていく段階から大工さんと設計が力を合わせているのは理想的!と山辺先生に褒めてもらいました!)

でも、今回は練習だから、全部木村君が考えます。図面で考えるよりも1/30の模型で見ると、より立体的に見やすく、先輩大工さんから「これではこの梁に異常に力がかかってもたない。」とか、「ここに柱入れないと地震きたらあかんで」とか指摘をもらって、頭を抱えてやり直しておりました。

本人も、力の流れがイメージできた。先輩大工さんの言っている事がよく分かった。凄い!と申しておりましたし、とても良い経験になったようです。

これ凄いでしょ。各社の大工さんが造った軸組模型が勢ぞろいです。

全部同じ平面図のお家なのに、屋根のかけ方などで、随分カタチが変わりますね。

山辺先生が一つずつ見て、問題点や改善点を教えてくれながら、普段の木の家の構造でも「よりよく」なるためのアドバイスをくださいました。

素晴らしい時間で、最高に勉強になりました。今後の家づくりにバッチリ活かしていきたいと思います。

最後に、ある工務店さんの講評の中ででた言葉が印象的でした。

その工務店さんは、ほとんどプレカットでなさっています。ごくまれに手刻みをするとの事でした。「そのため、軸組も普段のプレカットのやり方に沿っているので、どうしても梁が細く小さくなっている。他社さんの手刻みをよくやっている所とこれほど梁の大きさや組み方に差があるですね。。」とおっしゃっていました。

それに対するコメントで、プレカットは材木屋さんなどが行う。その際に構造をそちらのオペレーター的な方が考えるのだけど、木造をよく分かっている専門家は少ない。普段現場で木を扱い、建物を組み、力の流れなどを体感している自分たちが、そこを考える方が良い物ができるはず。木の家の心臓部を人に任せないで、自分たちで木を見て選んで考えて、やろうよ!とあがりました。

《もちろん、プレカットを否定するのではありません。プレカットを使っていても尊敬する工務店さんは私自身もありますし、東京など大都市になるとそもそも作業場の確保などが出来ないででしょうから。

プレカットを利用していても、自分たちで構造を考えている工務店さんもいらっしゃいますし、全てが構造を投げているわけではありませんから。》

よい言葉だなと純粋に思いました。

まだまだお話はありますし、一日目のレーモンド建築のお話もたっぷりありますが、そちらは「情報誌つくり手」の方でまいります。

それでは、暑い日が続きますが、皆様体調にはお気をつけくださいませ。


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