野上のブログ

大工さんが居てこそ。(お茶室、網代天井、水屋、ガラリ、躙り口)

大工さんの工事も最終盤に突入している紀の川市のA様家。本格的なお茶室になる和室の大工さんの仕事も出来上がってきました。

正面床の間、右側の琵琶床、左側の押入れ、琵琶床下には床からの暖房吹き出し口を隠すガラリ、押入れ上にはエアコン吹き出し口を隠すガラリもあります。よくよく見ていただくとお茶に使う各種の釘なども取り付けられておりまして、色々と細部まで慎重に検討して仕事をしています。

もう本当にお客様には感謝感謝で良い勉強をさせていただきました。誠にありがとうございます。

私はお客様と打合せをし、教えていただき、色々なお茶室の教科書と照らし合わせて、更に普通のお茶室にはない床下エアコンや壁からのエアコン吹き出し口などを考え合せ、全体的なデザインのバランスを検討して図面をかくのだけれど、

いくら綺麗に図面を書いても、こういう仕事は特にこれを綺麗に納めてくれる大工さんが居ないと、もう何にも始まりません。

例えば先ほどのエアコン(冷房)吹き出し口隠しのガラリも

綺麗な吉野杉の一枚板にエアコンの風を吹き出す穴をあけ、壁にうめているのだけど、エアコンの風が下に落ちやすいようにナナメに削ってもらっております。こんなの図面で書くの簡単だけど、実際造るのは大変ですよね~。

床の間の天井と琵琶床の天井も、伝統的な杉板の天井と網代天井。あっ、樹脂の上に模様を書いているものとは違いますよ。本物の木ですよ。

そもそも和室全体の天井板も「さおぶち天井」と呼ばれる伝統的な天井。先ほどの床の間の天井といい、こんなのは大工さんが上手く考えて納めてくれるのに頼る所がほとんどです。

また、これはお茶室の横の「水屋」の腰板。吉野杉の無垢板です。無茶苦茶綺麗な板ですが、これを削って、反ったりしないように下拵えし、上手く納めてくれるのもしっかりとした大工さんの腕と経験がなければ無理。図面に書くと「吉野桧の杢目のある板幅45㎝位」で書けば一瞬なんですがね。

さらに、

お茶室に入る小さな入口=躙り口=にじりくち。の杉板戸も造ってくれる建具屋さんがいてこそ。これも中々の決まりがありますから、それを勉強して(建具屋さんは既に知っていますが)図面を書くまではできますが、後は建具屋さんの腕を信じるだけです。

結局、ものづくりならどんな世界も一緒だろうけど、どんなに図面を書いても指示をだしても、最後は人の手と経験に頼っている部分がかなり大きい。それが嫌なら、無理なら、誰がやっても同じようなシステムを組んでいくことで、それはそれで素晴らしいことだと思うけど、やっぱりちょっと味気なくて、うちはそっちの道はあまり歩みたくないわけです。

そう考えると、僕らのような建築設計は、図面を書いて終わりではなく、材料の選択も大きいし、その材料を作ってくれる人が居なけりゃそもそも出来ない、大工職人さんに気持ちよく腕をふるってもらわなければならない!となると、色んな調整というかコミュニケーションの部分も大きくなってきます。

そもそも、お客様との打合せで必要な力も、設計センスとはまた違う能力が必要ですし、ただ自分一人が良い設計デザインをしていれば終わるってものではなくて、それでは良いものはまず出来ません。皆の力を合わせて家はできていくわけですから、皆さんに感謝感謝、また感謝でありますね。


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