大彦の古民家リノベーション

昔は一棟の家を建てるのにたっぷり時間をかけられました。
だからこそ《良い仕事》も多い。

・今ではいくらするか分からないような本物の材料
・現代の職人が思わず唸ってしまう技術
・木のことを知り尽くした素晴らしい納まり

50年～100年経っても「いいなぁ」と思わせるモノには、時代を超えた美しさと、時が経っているからこそ生まれた魅力が同居しています。

そんな古き良き日本家屋をリノベーションするのは大変です。
昔の技や想いを深く理解した上で現代の家づくりに融合するには、高いレベルの知識・技術・センスが求められるからです。
建築屋としては、いっそ解体して新築した方がよっぽど楽です。

でも、一度失われてしまったものはもう二度と戻ってきません。

私たち大彦が代々受け継いできた伝統的な職人の技と、現代の日本人のライフスタイルに合わせた家づくりノウハウをすべて注ぎ込んだリノベーションで、過去と今をつなぎ、そして50年～100年後の未来へと受け渡していく。

それが、地元で150年間家づくりに携わらせていただいてきた私たちの使命であり恩返しだと考えております。

築100年近い歴史的なお宅をリノベーションさせていただいた時。
今では販売していない昔ながらの小さな日本瓦が使われていました。
現代の大きなサイズでやり変えるのは簡単なのですが、歴史的建造物の風情が一度損なわれてしまうともう元には戻りません。なんとか手に入らないかと奔走した結果、昔ながらの瓦を保存していた瓦屋さんを探し当て、無事に元の風情を活かしたリノベーションができました。

またこのお宅には、ガラス障子越しに見る景色が素晴らしい、老舗の旅館のような立派な縁側（廻り縁）がありました。
ガラス障子は、現代の基準に当てはめると断熱性能も耐震性能もお粗末です。
しかし、これをただ単に現代のサッシに変えるだけではせっかくの風情が台無しに。
ガラスの風合いを活かしつつ断熱性能も高めるために、廻り縁が映える真空硝子に変更しました。

このお宅に限らず、昔の家の梁や柱に空いた構造上の穴も無骨な風情があって美しい。

このような古い家は傾いていることがほとんどですが、使っている木材は溜息が出るほど品があったりします。

このような《古さ》を丸ごと新しいものに置き換えるのではなく、《古いもの中にある風情》を活かすために現代の暮らしに合わせて調整する。

それこそが、私たちが日本家屋リノベーションの中で大切にしていることです。

性能をアップさせながら風情も諦めない。

そのために必要な技術とセンスを、日々磨き続けています。

粋（いき）とは洗練された美しさのこと。

技術と経験が詰まった仕事をしても、それをうまく隠して見せつけない。さらっと簡単に何気なく納まっているのが、私たちが考える《粋な仕事》です。

では日本家屋リノベーションにおける《粋》とは何か？

それは、古い木と新しい木が混在していることに気づかないほど、自然に融和していること。

古い日本家屋の木はとても魅力的です。
建てられた年代。使われた樹種。建てた大工の《木づかい》のセンス。住まい手の暮らし方。
それらによって、その家に刻まれた風情が滲み出ています。

そんな魅力あふれる古い木をできるだけ新しい家に使いながら《粋》に見せるためには、古い木に対する知識と経験、見せ方、新しい木の選び方、それらをさらっと溶け込ませる設計力と技術力、そしてセンスが必要になってきます。

また途中でリフォームが入っている場合は、せっかくの良いものを隠してしまっていたり、改悪してしまっているケースも珍しくありません。
その場合は、最初に家が建てられた時の大工さんのセンスやこだわりといった《粋》な部分を再発見して、それを現代の技術で再現する作業を行っています。

古さと新しさを融合させた、シンプルで洗練された【粋（いき）】な木の家。

「新しくリノベーションしたのに、昔からずっとここに建っていたみたいだね」

と言っていただけるのが最大の喜びです。

谷崎潤一郎の随筆、『陰翳礼讃』（いんえいらいさん）をご存知でしょうか。

西洋は部屋の隅々まで明るくする文化なのに対し、日本は逆に陰（かげ）を受け入れ、建築から照明、食文化、日用品、芸能に至るまで、そこに映える芸術性を美意識・美学としてきた。古き時代の日本家屋の特徴から、近代化以降失われつつあった日本人の風雅の源泉を論じた名著です。

私たちも、日本人の生活には光と陰の共存が大事だと思っています。

陰があるから光が際立つ。

家づくりにおいても、軒の出を深くしたり、天井高にメリハリをつけたりして、住宅の中に自然な陰影をつける設計をしています。

しかし、昔の家は陽が差す明るい方角にめったに使わない客間を持ってくることが多かった一方、普段の生活で利用頻度が高いキッチンや水回りなどは暗くてジメジメした面に配置されているのが一般的。

これでは今の暮らしとあまりにもかけ離れてしまいます。

普段の生活スペースは明るく快適に心地良く。
座敷とリビングをつなげて開放的に。
そこにうまく陰を採り入れることで、光の恵みを最大限享受するリノベーションを行なっています。

弊社の隣にある、日本家屋専門リノベーションモデルハウス《The Daihiko》は、私の曽祖父にあたる四代目”彦五郎”が90年前に建てた家を、七代目社長である私浩幹（ひろき）がリノベーションした家です。

戦前に建ってから90年、戦火や数々の地震・台風に襲われ、時代の変化という荒波もありました。

にもかかわらず、お客様や通行人の方から「今見てもかっこいいですね」と褒めていただけるのは、本当にとてつもないことだと感じています。

一部解体時に小屋裏に上がってみると、彦五郎の名前が刻まれた棟札（むなふだ※上棟時の記録として棟に飾る木札）が打ち付けてあり、「あぁ、ひいおじいちゃんが建てた家を私がリノベーションするんだな」とグッときてしまいました。

身内の贔屓目を抜いて見ても、その設計センス、使っている材料の質、そして施工技術の高さに感動すら覚えます。

天井の仕上材に使っている漆喰なんて、左官屋さんから「90年経ってもまだまだキレイですし丁寧な仕事なので、リノベーションせずにこのまま使いましょう」と言ってもらえて思わず感動…
普通、劣化して剥がれ落ちるのが当たり前ですからものすごいことです。

壁をめくると下地材に当時の大工さんが描いた施工図などが残っていたりして、90年の時を経ても建築という共通の土台で繋がっていられることに感謝の念が絶えません。

そんな素晴らしい家を、ひ孫の私が現代風のアレンジを加えてリノベーションさせてもらいました。

ひいおじいちゃんもおじいちゃんも、あの世から見てくれているでしょうか？「おっ上手くやったな」と褒めてくれるか？「まだまだ分かっちゃいねぇなぁ」と叱られるか？

皆様もぜひご見学いただき感想をお聞かせください。