野上のブログ

棟上げに向けて〜墨付け・刻み〜

今週末の和歌山市北部のK様家の棟上げ。現場は基礎工事も終わり、すでに大工さんの棟上げ前の工事も終わり、あとは棟上げを待つのみでございます。

「棟上げ」というのは、柱や梁などお家の構造が組まれる日、つまり今までは基礎だけだった所に一日で(二日の場合もあります)お家の骨格が姿を現す、家造りにおいてはかなり重要でお客様も感動いただける工程であります。

今日は木の家づくりの棟上げまでの作業場での進み方を少しご紹介いたします。

「柱」や「梁」と言っても、はじめから柱の形をしたものが運ばれてくるわけではありません。ずっと昔から山に植林をし、それを手入れをし続け、大きくなったり生えている木を伐採して、乾燥して(もっと色々工程はありますが)、材木屋さん製材屋さんが角材にして、弊社へ搬入いただきます。

《弊社は米ヒバと吉野桧、吉野杉という樹種を使っていますが、全て品質・耐久性ともにとても自信をもっています。(それはまた別の機会に)》

まだこの時点では品質のよい角材なだけですから、

柱と梁や梁と梁の組まれる接合部の加工をして、柱や梁にしていかねばなりません(柱の上に梁を置いただけなら落ちてしまうでしょ。しっかり組まないと)。そのために接合部の木組み加工の指示を、実際の角材につけていきます。

上の角材にも何やら数字やらひらがなやら、線などが書かれていますでしょ。これが「墨付け」と呼ばれる作業であります。もちろん誰にでもできるわけではなく、頭も良く、色々なことを理解している棟梁格の大工さんができるものです。

次に、「墨付け」の指示通りに大工さん達が手で木に加工していきます。穴をほったり、切ったり、

上の梁の凸加工と下の梁の凹加工、「あい」そうでしょ

こうしてたくさんの柱や梁が出来ていきます。ちなみに、この手加工作業を「手刻み」と言います。これを総称して「墨付け・手刻み」と呼びます。これに対するのか「プレカット」。

今までの作業を、コンピューターに入力する方(資格がいるわけではありません)と、キカイによって自動的に加工してしまうやり方(詳しくは違っている所もあると思いますが、大まかに理解いただくにはこれでよいと思います)です。

となれば、棟上げの日に製品として柱や梁が工場から運び込まれるわけですから、冒頭で【「柱」や「梁」と言っても、はじめから柱の形をしたものが運ばれてくるわけではありません。】と述べましたが、これはプレカットでは間違っていますね。

今や木の家のほとんどがこちらのプレカットでありまして、もちろんプレカット工場もピンキリでしょうし、色々なやり方工夫をされて品質のよいものを造られているところもあります。また墨付け手刻みをできる大工さんがとても少なくなったということもあります。

ただ、私達は、お家を永く守っていく構造材ですから、そのお家を担当する大工さんが(設計も)材料を吟味して、使い方を決め、一本一本丁寧に作り込んでいいきたい。お家の根幹の柱や梁に自分たちで責任をもって仕事をしたいと思っています。木の家の命でもある柱や梁が、棟上げの日に工場から運ばれてきて初めて見て、それをそのまま組んでいく。というのがどうにも嫌なのです。ですから。弊社は全棟「墨付け・手刻み」であります。そして、若い大工さん達にもその技術を継承し守っていっております。

《ただ、これには弊社が恵まれているからできる部分もあるでしょうし、色々な考え方があるかと思います。手刻みでなければダメ!などというつもりはございませんのであしからず。弊社はそれが良いと信念をもってやっておるだけです》

上の図面は、設計の図面を元にして書かれる「カンバ板」。「墨付け」には必須の大工さんの構造図です。設計の書く構造図とは違い、木組みの方法などが書かれています。社員大工制の弊社ですから、設計がお家の間取りを考えていく頃から大工さんの知恵も拝借してつくりあげていけるのも大きな強みなんです。

最後に、今回のお家のメインのとても大きな梁。ばっちりお家の内部に見えてくるわけですが、迫力ある大きさだけじゃなく、とっても綺麗です。棟上げで組まれるのが大変楽しみです!

さて、今日は結構長くなっちゃいましたが、「墨付け・手刻み」はなかなか説明が難しいんですね。何か疑問に思うことなどありましたら、Webサイトのお問い合わせやメールなどから、ご質問ください。

今年はお盆休み前に「棟上げ」というメインイベント(そしてその後の「野地」も大変)が控えておりますので、大工さんたちも設計担当も、休みが近づいてくるウキウキ気分などは全くないのでありますね〜。


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